水稲新品種「粒すけ」の晩植栽培 ―5月中旬までの移植で収量600kg/10aを目指す―
2021年11月
筆者 | 所属 | 千葉県農林総合研究センター 水稲・畑地園芸研究所 水稲温暖化対策研究室 |
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職名及び氏名 | 研究員 福永 佳史 | |
題名 | 水稲新品種「粒すけ」の晩植栽培 ―5月中旬までの移植で収量600kg/10aを目指す― |
本県が育成し、令和2年に栽培が始まった「粒すけ」は、「コシヒカリ」より多収で、倒伏しにくく、5月中旬移植でも安定した収量が得られます。「粒すけ」の晩植栽培を取り入れることで、収穫期間を広げることができ、労力の分散及び経営規模の拡大にもつながります。そこで「粒すけ」の5月中旬までの移植で収量600kg/10aを達成する栽培のポイントを紹介します。
(1)移植は5月中旬まで
移植日が遅いほど、稈は長くなり、倒伏しやすくなります。㎡あたり籾数は増加しますが、粒厚1.8mm以下の屑米の割合が増え、特に移植が5月下旬になると収量が大きく減少します。以上から晩植栽培の移植は5月中旬までとします。
(2)目標収量は600kg/10a
5月中旬移植での整粒歩合は、4月下旬移植と比べて、㎡あたり籾数が同じ場合でも低くなります。農産物検査における1等(整粒歩合70%以上)を安定して確保するための籾数は31,000粒/㎡で、目標収量は600kg/10aです。その時の幼穂形成期の生育目標は茎数550本/㎡(約30~33本/株)、葉色値(SPAD値)39です。
(3)基肥窒素施用量は1kg/10a減
生育期間が高温になる5月中旬移植では、4月下旬移植よりも幼穂形成期までの地力窒素由来の地上部窒素吸収量が多くなります。茎数等の生育が過剰にならないように、5月中旬移植では4月下旬移植より基肥窒素施用量を1kg/10a程度減らします。
(4)生育に応じた管理の実施
生育目標に対して生育が過剰な場合は、早めの中干しで茎数を制限して、籾数の増加を抑えます。一方、幼穂形成期の生育が目標を下回った場合は、穂肥の窒素量は増やさずに施用時期を3~7日早めます。
写真 「粒すけ」は5月中旬移植でも倒伏しにくい
注1)栽培場所 水稲温暖化対策研究室場内ほ場(千葉市緑区刈田子町)
注2)耕種概要 5月12日移植、基肥窒素施用量0kg/10a、穂肥窒素施用量3kg/10a