低濃度エタノールを用いたナシ白紋羽病発病跡地の土壌還元消毒

2021年12月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 生物工学研究室
職名及び氏名研究員 髙橋 真秀
題名低濃度エタノールを用いたナシ白紋羽病発病跡地の土壌還元消毒

県内の白紋羽病被害ナシ園では、改植後の若木が枯死してしまう事例があります。そこで、改植時の発病跡地対策として、低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒法を開発しました。

具体的な処理方法
土壌還元消毒の効果は、地温が高いほど高まることから7月~8月を消毒期間とします。バックホー等で残根を取り除き、消毒範囲(1.5m×1.5m)を深さ50cm程度まで掘り上げて土をやわらかくします。7月中~下旬に65%エタノール水溶液(土壌還元消毒用資材エコロジアール、日本アルコール産業株式会社)を1%エタノール水溶液となるように希釈し、スピードスプレヤーと畦畔板を使用して600L(267L/m2)処理します(写真)。その後、畦畔板を外し、速やかに2m×2mの範囲に農ポリ等の透明フィルムを被覆します。空気を遮断するためフィルムの端は、四辺とも全て土中に埋め込み、1か月程度被覆を行います。被覆除去時にフィルム内に雑草の発生が見られないことが還元化した目安になります。苗木は、消毒を実施した当年の冬に定植できます。なお、黒ボク土では、透明フィルムを除去してから2週間程度で自然に還元状態が解消されることを確認していますが、苗木定植前に土壌からドブ臭がする場合には、定植予定箇所を掘り上げて還元状態を解消してください。

消毒から2~3年は効果が持続、その後は追加の対策を
これまでに10か所の県内の現地ナシ圃場の白紋羽病発病跡地において消毒効果を確認してきました。消毒後に定植した苗木の初期生育は優れる傾向にあり、定植3年目まで多くの圃場で効果が持続しましたが、2か所の圃場では、定植2年目と3年目にそれぞれ白紋羽病の発病が確認されました。このことから2~3年経過後には、化学合成農薬や温水治療等による追加の対策を行う必要があると考えられました。白紋羽病は、化学合成農薬も含め1回の処理だけでは、長期的な防除が難しいのが現状です。当センターでは現在、有効な対策技術を組み合わせて、白紋羽病を長期にわたって防除できる技術の確立を進めています。

写真 スピードスプレヤーの排水ドレンと畦畔板を使って低濃度エタノールを処理する様子