促成トマトの養液栽培に適する強草勢台木の利用

2022年7月

筆者所属千葉県農林総合研究センター
職名及び氏名研究員 橋本 奈都希
題名促成トマトの養液栽培に適する強草勢台木の利用

千葉県で行われているトマト促成長期多段どりの養液栽培は、8月に定植し10月から翌年7月まで収穫をする作型です。1年にわたる栽培となるため、何も対策しないと栽培後半に草勢の低下や小玉果の増加が起こりやすいという問題があります。

養液栽培における栽培後半の草勢低下の主な原因は根傷みであり、土耕の場合のように根部病害が原因となることは多くありません。そのため、台木品種の選択には、病害抵抗性より草勢の強さを重視します。

種間雑種台木はトマト近縁種との交雑種で、栽培種(トマト種)台木よりもさらに草勢が強くなります。表は台木の比較試験の結果ですが、種間雑種台木を利用することで、上位節の茎があまり細くなることなく栽培後半まで草勢を維持でき、自根や栽培種台木よりも多収となりました。

一方、このような種間雑種台木の利用には、初期から草勢が強くなりすぎて栄養生長に偏ってしまい、空洞果の発生や糖度が低下しやすいという欠点があります。空洞果は、果実の大きさの割に日射不足等により十分な量の同化産物が得られないと、ゼリー部の発達が悪くなって発生します。対策としては、外張りフィルムの洗浄や汚れにくく透明度の高いフッ素系フィルムへの交換、冬季には炭酸ガスの施用が有効です。また、肥培管理や摘葉で栄養生長と生殖生長のバランスを整えることも大切です。栽培初期~冬季までは培養液濃度を慣行の70~80%に低下させ、冬季は摘葉を早めに行うことで過繁茂とならないように気をつけましょう。

表 台木の違いが茎径と収量に与える影響