秋冬ネギの黒腐菌核病対策

2022年8月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 病理昆虫研究室
職名及び氏名上席研究員 中田 菜々子
題名秋冬ネギの黒腐菌核病対策

1.はじめに
 ネギ黒腐菌核病はカビの一種が引き起こす病気で、軟白部が黒く腐敗するため商品価値が失われてしまいます。本病原菌は土壌中で数年間生存するため防除が難しく、土壌消毒を含めた総合的な対策が必要です。そこで、土壌消毒や各種殺菌剤の効果を調査し有効な対策技術を明らかにしたので紹介します。

2.土壌くん蒸剤による土壌消毒の効果
 定植前にキルパーやバスアミド微粒剤を処理することにより、土壌中の病原菌を減らすことができます。これにより、農機具等による周辺圃場への持ち込みリスクを減少させる効果も期待できます。ただし、菌密度が高い圃場では、土壌消毒のみで発病を抑えるのは難しいため、育苗期または生育期の殺菌剤処理を併用することが必要です。

3.育苗時の対策
 ネギの育苗にあたっては、パレード20フロアブルをペーパーポット苗にかん注処理すると、処理後5~7か月間は圃場で高い効果が持続します。しかし、台風や豪雨で圃場が湛水状態となった年は、処理後6か月以降に効果の低下が見られたことから、降水量が多い年や収穫が遅くなる場合は、生育期の殺菌剤散布を併せて行います。

4.生育期の対策
 生育期の薬剤散布で効果のある薬剤を探索し、パレード20フロアブル及びアフェットフロアブルの効果が高いことが分かりました。また、地温が20度以下に下がり始める9~10月が薬剤散布を開始する適期と考えられました。さらに、千葉県の秋冬期の地温と気温の関係を分析した結果、最高気温と最低気温の平均とネギの根元付近の地温が概ね一致することが分かりました。したがって、天気予報の最高・最低気温を目安に生育期の散布開始時期を決めることができます。

【写真】発病株(左)と軟白部にできた黒い粒(菌核)(右)