早生のWCS用イネ品種「つきはやか」の特性

2022年10月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 水稲・畑地園芸研究所 水田利用研究室
職名及び氏名主任上席研究員 宇賀神 七夕子
題名早生のWCS用イネ品種「つきはやか」の特性

本県では米の生産調整を推進するとともに耕畜連携を図るために、飼料用米及びホールクロップサイレージ(発酵粗飼料、以下、WCS)用イネの生産を推進しています。WCS用イネ品種(茎葉型品種)の収穫期は、良質な発酵品質を確保するため稲体の水分が65%以下となる出穂10~40日後とされています。また、収穫作業は稲体に付着水が無い状態で行う必要があるため、降雨時には行えません。コントラクターが大面積の収穫作業を請け負う現場からは、収穫期を分散させ計画的に収穫を進められるよう、晴天が期待できる8月上旬から収穫可能な早生品種が求められています。

今年から一般栽培が始まった早生のWCS用イネ新品種「つきはやか」は、4月下旬に移植をした場合、7月25日前後に出穂するため8月上旬から収穫が可能で、作期分散に有効です。イネは移植時期により出穂期が前後するため、8月上旬に収穫するには4月中に移植する必要があります。「つきはやか」は慣行のWCS用イネ品種である「たちあやか」に比べ、苗丈は短く充実しており、出穂期は7~10日早く、稈長は約1mと同程度、穂数は約260本/㎡と少なく、現物収量は約3t/10aで約0.7t/10a少ないです。他の茎葉型品種と同様に、茎数が増加しにくく、極端な疎植は減収につながるため、栽植密度は主食用米と同様に55株/坪程度とします。現物収量に占める穂重割合は約17%で、茎葉型品種ではありますが、慣行の茎葉型のWCS用イネ品種である「たちあやか」や「たちすずか」に比べると大きいです。また、「つきはやか」は、「たちあやか」や「たちすずか」にはない縞葉枯病抵抗性を持っています。

【写真】8月下旬の「つきはやか」(左)と「たちあやか」(右)の姿