ニホンナシにおける芽接ぎの実施時期
2024年6月
筆者 | 所属 | 千葉県農林総合研究センター果樹研究室 |
---|---|---|
職名及び氏名 | 研究員 井上雄樹 | |
題名 | ニホンナシにおける芽接ぎの実施時期 |
ナシ樹において、側枝(果実を結果させる枝)は通常は3~5年で更新する。高い生産性を保つためには側枝を樹冠内に均等に配置することが理想であるが、適切な場所に発生しないことも多い。このような場合、高接ぎの一種である腹接ぎで側枝を確保する方法が有効である。腹接ぎには様々な方法があるが、今回は「幸水」における芽接ぎについて、実施時期が活着率等に及ぼす影響を調査したので紹介する。
芽接ぎは発育枝の一芽を剥がし、台木に接ぎ木する方法で、一般的には、8月下旬から9月中旬が適期とされている。今回の試験では、6月中旬、6月下旬、7月下旬、8月下旬、9月下旬に芽接ぎを行った。その結果、活着率は、6月中旬から8月下旬まで差がみられなかったが、9月下旬は台木の表皮の剥離が困難となり、芽接ぎを行うことができなかった。一方で、翌年の発芽率は6月中旬が50%、6月下旬が48%と、7月下旬の92%と比較して低くなった。
「幸水」の発育枝の腋芽の発育は、6月下旬の新梢伸長停止期以降進むとされており、穂木採取時の腋芽の発育程度が翌年の発芽率に影響している可能性が示唆された。このことから、芽接ぎは7月以降に発育枝から充実した腋芽を選んで穂木を採取することで、効率的に実施できると考えられた。
【表説明文】芽接ぎの実施時期が活着に及ぼす影響