5haのサツマイモ経営を目指すための規模拡大方策

2024年8月

筆者所属研究マネジメント室
職名及び氏名研究員 和泉 敦也
題名5haのサツマイモ経営を目指すための規模拡大方策

 千葉県はサツマイモ生産額が全国2位(令和4年194億円)で、特に県北東部の北総台地に位置する成田市、香取市、多古町において生産が盛んです。近年、農家の高齢化により産地では、経営体数、作付面積ともに減少が進んでいます。産地の維持のためには担い手経営体の規模拡大が求められていますが、家族労働3人の経営体では、3ha程度が作付規模の上限と言われています。ここでは、3ha程度のサツマイモ経営体が5haを目指して規模拡大をする際、貯蔵庫などの拡大方策の導入がどの程度所得向上及び規模拡大効果に寄与するかを試算しましたのでご紹介します。
 農研機構が作成した線形計画法プログラムXLPを用いて、家族労働3人の経営体を想定したモデルを作成し、これを基本モデル(所得649万円、作付面積358a)としました。この基本モデルに表で示した拡大方策を導入して試算を行いました。
 結果、所得向上と規模拡大の両方の効果が得られたのはコンテナ出荷、貯蔵庫及び臨時雇用の3つでした。
 次に複数の拡大方策の組み合わせを試算しました。その結果、貯蔵庫、コンテナ出荷、臨時雇用(9月~11月)2人を導入することで、所得770万円(+121万円)、作付面積487a(+129a)まで拡大が可能であると試算されました(図)。
 経営体によって耕地面積や労働力などの条件が異なります。本研究の結果を基に経営体ごとに条件を変えて導入をシミュレーションできる拡大方策導入試算ツールを開発中です。規模拡大や機械等の導入を検討する際に、本研究の結果や試算ツールを活用していただけると幸いです。
                表 拡大方策の効果と費用

注1)移植機は現地でのタイムスタディの結果をもとに価格と導入効果を定めた(データ省略)
 2)コンテナ出荷は収穫後に泥・蔓付きのままでの出荷を想定
 3)臨時雇用は期間を連続した3ヶ月として、収穫・出荷期間で所得が最大となる期間とした

図 規模拡大方策の導入による所得と面積の拡大効果
注)育苗委託、移植機、年間雇用は効果が得られなかったが、育苗委託の一部利用や移植機の1人作業体系の確立、年間を通しての労働力活用などにより効果が得られる可能性がある