キンセンカのマルチ栽培導入のポイント
2024年9月
筆者 | 所属 | 暖地園芸研究所 野菜・花き研究室 |
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職名及び氏名 | 上席研究員 金子 洋平 | |
題名 | キンセンカのマルチ栽培導入のポイント |
南房総地域のキンセンカ栽培では、疫病の発生が問題となっていますが、マルチ栽培の導入により発病を少なくすることが可能です(図)。ここでは、キンセンカでのマルチ栽培導入のポイントを記します。
1.生育、収穫時期、切り花品質への影響
マルチの有無がキンセンカの生育や収穫時期及び切り花品質に与える影響を令和元年~3年に調査しました。その結果、草丈や葉色、時期別の収穫本数、切り花品質(切り花長、切り花重、脇芽数)に明瞭な差はみられず(データ省略)、マルチの有無による影響は無いと判断しました。なお、マルチ(黒色)の有無による深さ2cmの地温に対する影響を調査したところ、マルチ有りはマルチ無しに比べ、地温が1~3℃高く推移しました。
2.疫病以外の病害発生への影響
マルチの有無が疫病以外の病害の発生に及ぼす影響を調査したところ、炭疽病は9月定植の年末出荷作型のマルチ栽培で発病が多くなることがありました。気温の高い状態で周辺の罹病葉に存在していた炭疽病菌の胞子が、マルチで跳ね返った雨水を介して発生拡大を促したと考えられます。加えて、この作型では定植直後の気象条件によっては、苗がマルチと密着して生じる葉焼けや地温の上昇による活着不良が発生する場合があるのでマルチ栽培は避けた方がよいでしょう。うどんこ病と菌核病には影響はありませんでした。
3.マルチ栽培が活かせる作型
キンセンカのマルチ栽培では疫病の発生が少なくなることに加え(図)、生育及び切り花品質に影響がないことが明らかとなりました。マルチ栽培は、気温が低下して炭疽病の発生が少なくなる10月下旬以降に定植する春彼岸出荷型で導入しましょう(写真)。特に疫病が常発する圃場では、その被害を抑えるためにマルチ栽培を導入することをお勧めします。その際、追肥作業ができなくなることを踏まえ、基肥は「エコレット一発484」などの緩効性肥料を施用しましょう。
キンセンカ栽培におけるマルチの有無が疫病の発病に及ぼす影響
キンセンカのマルチ栽培の様子