緑肥作物エンバクを利用した秋冬ニンジンの減肥栽培
2024年12月
筆者 | 所属 | 土壌環境研究室 |
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職名及び氏名 | 研究員 宮本 昇 | |
題名 | 緑肥作物エンバクを利用した秋冬ニンジンの減肥栽培 |
緑肥作物として利用されるエンバク野生種アウェナ ストリゴサ(以下、エンバク)は深さ1mくらいまで根を張り、土壌中に残った肥料成分を吸収します。そのエンバクをすき込むことで、土壌中で分解され、後作物で肥料として再利用できます。このため、緑肥の導入によって、慣行栽培より施肥量を減らすことができます。ここでは、エンバクとニンジンの播種時期を変えて、その組み合わせごとに、ニンジンの窒素、りん酸、加里(以下、NPK)3割減肥栽培を検証した結果について紹介します。
農林総合研究センターの黒ボク土の圃場に、エンバク「ヘイオーツ」(雪印種苗㈱)を令和3年2月25日と3月18日に播種しました。5月25日に、エンバク2月下旬播種区(草丈95㎝、C/N比22)及び3月中旬播種区(草丈70㎝、C/N比15)をすき込みました。ニンジン「愛紅」(住化農業資材㈱)を7月21日と8月10日に播種し、それぞれ11月19日と12月10日に収穫しました。ニンジンの基肥はエンバクを栽培した区でNPKを3割減肥し、エンバクを栽培しなかった区は標準量を施肥しました。
ニンジンの可販収量は、7月下旬播種と8月上旬播種ともに、エンバク栽培の有無及びエンバクの播種時期の違いによる有意な差がありませんでした(図1)。以上より、エンバクをC/N比20~30程度ですき込むことによって、エンバク及びニンジンの播種時期にかかわらず、後作の秋冬ニンジンでNPK3割減肥栽培が可能と考えられました。
エンバクのようなイネ科の緑肥は、出穂期以降にC/N比が著しく上昇します。C/N比が大きいエンバクをすき込むと土壌中で分解しづらく、ニンジンでの肥料的効果が小さくなるため、出穂前にすき込むことが望ましいです。