大規模化に対応した「粒すけ」の全量基肥栽培

2025年2月

筆者所属水稲温暖化対策研究室
職名及び氏名研究員・山本一浩
題名大規模化に対応した「粒すけ」の全量基肥栽培

令和2年にデビューした水稲新品種「粒すけ」は耐倒伏性に優れることから、移植時期を4月中旬~5月中旬と長くとることができ、作付面積の拡大に対応できる品種として、大規模経営体等への導入が期待されています。作付面積の拡大を図る上で、施肥作業の省力化は重要な要素です。ここでは、壌質土における「粒すけ」の全量基肥栽培に用いる肥効調節型肥料について、各移植時期に適した施用技術を紹介します。
 4月中旬移植 全量基肥で施用する肥効調節型肥料は、溶出期間が80日のシグモイド型肥料(以下、80日型肥料)を用います。施肥量は分施体系(以下、慣行)の総窒素施用量と同量の10アール当たり6kgを施用することで、登熟後半まで葉色が高く推移し、慣行並みの生育量及び収量が得られます(表、図)。
 5月中旬移植 80日型及び溶出期間が100日のスーパーシグモイド型の肥効調節型肥料のいずれを施用した場合も、慣行と同様に登熟後半まで葉色が高く推移し、慣行並みの生育量及び収量が得られます(表、図)。ただし、4月中旬移植と比べて幼穂形成期までの気温が高いため、地力窒素の溶出が早まり、生育過剰及び倒伏が懸念されます。対策として、窒素成分量を4月中旬移植より10アール当たり1キロ減肥します。
 移植時期に関わらず、玄米の外観品質は肥効調節型肥料の施用で慣行より高くなる傾向があります。
 以上から、「粒すけ」の全量基肥栽培は、施肥作業の省力化に加え、移植時期ごとに適切な肥料調節型肥料を選択することにより、慣行並みの収量、慣行以上の品質が得られます。水稲経営面積の規模拡大に是非、御活用ください。


表 壌質土における「粒すけ」の窒素施用量(水稲温暖化研究室ほ場(千葉市))
注)技術指導資料(水稲新奨励品種「粒すけ」の特性と栽培技術)の施肥基準からほ場条件により窒素施用量を調整


図 移植時期、全量基肥栽培用肥料ごとの精玄米重の違い