ビワ果実の横径を指標とした果樹カメムシ類の防除適期

2025年3月

筆者所属生産環境研究室
職名及び氏名研究員・角田ひかり
題名ビワ果実の横径を指標とした果樹カメムシ類の防除適期

 ビワ栽培では、病害虫等から果実を保護するために袋掛けをします。果樹カメムシ類は、果実が肥大して袋に接するようになると、袋の上から果実を吸汁します(写真)。吸汁された果実は表面が凸凹になり販売ができません。また、傾斜地が多いビワ園での薬剤散布は多大な労力を要するため、防除回数を少なくすることが求められます。そこで、被害が増加するタイミングを狙った効果的な防除を可能とするため、果実の大きさを指標とした薬剤防除適期を検討しました。
 袋掛けしたビワ果実を野外のカメムシから保護するために網袋で覆った後、時期を変えて網袋の中にチャバネアオカメムシ成虫10頭を放飼しました。放飼開始時に計測した果実の横径と、収穫した果実に生じた被害との関係を調査したところ、果実平均横径24mmでは、販売可能な果実の割合である可販果率は91%であったのに対し、32mmでは82%、42mmでは50%と、果実の肥大に伴い可販果率が低下しました(図)。よって、80%の可販果率を確保するには、果実平均横径が35mm前後に防除を行うと効率的であることがわかりました。
 千葉県の主要品種「大房」の場合、果実横径35mmを指標とした薬剤散布適期は、5月上旬頃と考えられ、1回の防除でも効果が期待できます。ただし、ビワの生育は品種等によって異なり、生育が早い圃場では早めの薬剤散布が望ましく、2回散布することも必要となります。また、被害はカメムシの量も影響するため、今後はカメムシの量を指標に加えた薬剤散布適期を検討していきます。


写真 果樹カメムシ類に袋の上から吸汁されているビワ果実