秋冬どりニンジンにおけるエクボ症の発生要因と軽減技術

2020年8月

筆者所属農林総合研究センター 畑地利用研究室
職名及び氏名研究員 山下 雅大
題名秋冬どりニンジンにおけるエクボ症の発生要因と軽減技術

秋冬どりニンジンで発生するエクボ症は、首や肩部に凹凸を生じる生理障害で、その症状がブタの鼻の形状に似ていることから現地では「ブタ鼻」とも呼ばれています(写真)。ここでは、エクボ症の発生しやすい条件と軽減技術を明らかにしたので紹介します。

エクボ症は、生育初期に発生する胚軸の裂開の痕跡が残ったものです。この裂開は、生育初期が高温であると発生しやすく、さらに播種後28日頃までにまとまった降雨があると生育が進むために発生が助長されます。

エクボ症の発生しやすさは品種によって異なり、県内で導入されている14品種で比較するとエクボ症発生株率は2~34%と差が見られました。発生しやすい品種には、「愛紅」(住化農業資材(株))と「紅ひなた」(住化農業資材(株))がありました。一方で、発生しにくい品種には、「翔馬」(タキイ種苗(株))と「クリスティーヌ」(みかど協和(株))があり、これらの品種の導入は軽減対策の一つになります。

また、胚軸部分に土を寄せて保護することでエクボ症の発生を軽減することが可能です。中耕・培土ができる手押しの中耕除草機「たがやす」((株)向井工業)を用いることで、15cm程度の狭い条間を胚軸が隠れる程度に培土できます。培土のタイミングは特に重要で、播種後21~28日の2~3葉期に胚軸が隠れるように培土します。一方で、培土が遅れて、播種後35日頃 (葉数3.8枚)になってしまうと、既に胚軸の裂開が始まっているため、発生は軽減されません。培土の時期が早過ぎると株が埋まってしまい欠株や生育のばらつきにつながります。生育を観察しながら適切な時期に培土を行いましょう。

写真 秋冬どりニンジンで発生するエクボ症