緑肥作物の上手な活用方法  -緑肥用エンバクの分解速度と後作物の播種可能時期-

2020年9月

筆者所属農林総合研究センター土壌環境研究室
職名及び氏名主任上席研究員 岩佐 博邦
題名緑肥作物の上手な活用方法  -緑肥用エンバクの分解速度と後作物の播種可能時期-

緑肥作物の導入は、土づくりや有害センチュウの抑制等に有効です。緑肥作物を上手に活用するためには、緑肥作物を十分に分解させてから後作物を播種することが大変重要です。緑肥作物の分解速度は、緑肥作物の種類やすき込み時の生育状態によって異なります。ここでは、代表的なイネ科緑肥作物である緑肥用エンバク(写真)を例に、すき込み時の草丈と分解速度、すき込み後の後作物の播種可能時期について紹介します。

土壌にすき込まれた緑肥作物の分解速度は、緑肥作物に含まれる窒素と炭素の割合(C/N比)に影響されます。窒素に対する炭素の割合が小さいと(C/N比:小)分解は速やかです。逆に、窒素に対する炭素の割合が大きいと(C/N比:大)ゆっくり分解されます。
一般的に、緑肥作物は草丈が高くなるほど、C/N比が大きくなります。春まきの緑肥用エンバクの場合、草丈43cm以下のとき、C/N比は作物体が速やかに分解するといわれる20未満となります。草丈43cm以下ですき込むと、緑肥用エンバクは速やかに分解され、すき込み4週間後には、緑肥用エンバクが吸収した窒素の2割から4割程度(窒素量で10a当たり1~2kg)が後作物に利用可能となります。
一方、草丈95cm以上のとき、C/N比が30以上の値となり、窒素飢餓(緑肥作物の分解に土壌中の窒素が利用され、後作物に供給される窒素が不足する)の発生が懸念されます。

緑肥用エンバクを適期(草丈95cm未満)にすき込んだ際の後作物の播種可能時期は、ニンジンを例にすると、播種時の作業性や初期生育の観点から4週間以上空けることが望ましいと考えられました。
緑肥作物の適期のすき込みと後作物の適期播種に留意して、上手に緑肥作物を活用しましょう。


写真 すき込み適期の緑肥用エンバク