土着天敵と天敵製剤<w天敵>で難防除害虫ハダニを防除

2021年1月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 病理昆虫研究室
職名及び氏名研究員 清水 健
題名土着天敵と天敵製剤<w天敵>で難防除害虫ハダニを防除!

全国一の生産量を誇る千葉県のニホンナシでは、ハダニの加害を防ぐため、防除暦を参考に農薬の散布が行われています。近年では薬剤抵抗性の発達による殺ダニ剤の効果低下が懸念され、農薬に頼らないハダニ防除技術の開発が求められています。そこでナシ園において発生する土着の天敵カブリダニ類や、市販の天敵カブリダニ製剤などを活用してハダニを防除する、<w天敵>ハダニ防除技術を開発しました。

本防除技術では、複数の防除技術を矛盾なく組み合わせる総合的病害虫管理(IPM)が基本となります。すなわち、ナシ園に多目的防災網を展張して大型害虫の侵入を防ぎ、また従来の防除体系で多用されていた非選択性殺虫剤の使用を控えることにより、ナシ園内の天敵カブリダニ類を温存します。さらに、従来は清耕管理が基本だったナシ園内の雑草を、あえてナシ樹株元に残した株元草生栽培を行うことで、天敵カブリダニ類の住みかを供給します。これらの取り組みにより、ナシ園で多くの土着の天敵カブリダニ類が発生するようになり、樹上のハダニの発生を抑えることができます。加えて、園内に天敵カブリダニ類が定着しやすい環境を整えたうえで天敵カブリダニ製剤を放飼すると、製剤からのカブリダニが早く発生することにより、その後のハダニ密度をさらに低く抑えることができます。ハダニの発生に悩まされるナシ園において<w天敵>を活用することにより、安定的な、環境にも優しいナシ栽培が可能となります。

なお、本研究の一部は農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」(土着天敵と天敵製剤<w天敵>を用いた果樹の持続的ハダニ防除体系の確立)において実施しました。

写真 天敵ミヤコカブリダニと株元草生栽培のナシ園