水稲の育苗面積や労力を減らす高密度播種苗の利用

2024年2月

筆者所属農林総合研究センター水稲・畑地園芸研究所 水稲温暖化対策研究室
職名及び氏名研究員 西田 暁彦
題名水稲の育苗面積や労力を減らす高密度播種苗の利用

千葉県では、水稲の移植作業が4月中旬から5月上旬の1か月に集中しており、この時期の育苗ハウス不足や育苗管理の労働負担が規模拡大の制限要因となっています。そこで、単位面積当たりの苗箱数を減らせる高密度播種苗技術を用いた「コシヒカリ」の栽培技術について紹介します。
高密度播種苗技術とは、厚播きした苗箱を用いて1箱当たりの移植面積を増やすことで、必要な苗箱数を減らす技術です。必要な苗箱数が減ることで、省スペース・省力で育苗ができます。また、厚播きすることで、通常よりマット形成が早く、育苗日数が短縮できる利点もあります。
乾籾播種量は、標準の約2倍、苗箱1箱当たり230~300gとします。10a当たりに必要な苗箱数は、播種量130gの稚苗を1株4本植のとき15~16箱であるのに対し、播種量300gで1株5~6本、坪55株植えでは9~10箱になります。さらに、坪40株植えの疎植にすれば7~8箱に減らすことが可能です。
育苗器を用いて加温出芽させた場合の育苗日数は、ハウス育苗では3月下旬~4月上旬播種が21日、4月中旬~下旬播種が14日前後、露地プール育苗では4月上旬播種が28日、4月中旬播種が14日前後です。ただし、気象条件でマット強度が確保されるまでの期間は変化するので、移植前に苗マットの強度を確認してください。マット形成が早いため、通常よりやや小さい苗が移植の適期です。通常の育苗より移植適期が短く、ムレ苗や病害が発生しやすいので、管理には注意してください。
田植機の苗かき取り量は、通常より少なく設定します。このため、高密度播種苗に対応した田植機の利用が適します。


【図説明】高密度播種苗(左:播種量300g)と標準播種苗(右:播種量150g)