サツマイモ「べにはるか」ウイルスフリーポット苗を用いた育苗における採苗効率の向上

2023年12月

筆者所属農林総合研究センター 水稲・畑地園芸研究所 畑地利用研究室
職名及び氏名研究員 髙橋 紘輝
題名サツマイモ「べにはるか」ウイルスフリーポット苗を用いた育苗における採苗効率の向上

「べにはるか」は甘味が強く、市場評価が高い粘質の品種であり、千葉県の主力品種です。しかし、苗の伸長速度が遅い上、切り苗が曲がりやすく、採苗効率が低いことが課題となっています。そこで、この品種の採苗効率を改善する育苗技術について紹介します。

サツマイモの育苗は、親株床・増殖床の二段階で行うのが主流です。まず、1~2月にウイルスフリーポット苗を電床線で温めた親株床に移植し、育苗します。そこから順次採苗して、無加温の増殖床に移植し、最終的に本圃に定植する切り苗を得ます。どちらの育苗床でも、密植するほど面積当たりの採苗数は増加しますが、曲がった切り苗が多くなります。そのため、条間と株間は、親株床では30㎝、増殖床では20㎝程度が適切です。採苗方法は、どちらの育苗床でも、主茎側に1節を残して切り取る方法が適しています。特に増殖床では、2節以上残す方法よりも、日による採苗本数のばらつきが少なくなります。

また、増殖床への移植から2週間は、葉焼けを防ぎつつ温湿度を確保し、活着を促進することが重要です。そこで、トンネル被覆の上に遮光資材を被せると同時に、不織布のべたがけを行うとよいでしょう(写真)。特にシルバーグレーの遮光ネットが、日中の湿度をより高く保ち、採苗数を早くから増加させることができます。

以上をまとめると、ポット苗を用いた「べにはるか」の育苗は、密植にしすぎないよう条間・株間を調整して定植し、採苗時は一節を残して切り取るのがよいでしょう。また、増殖床での温湿度については、べたがけやトンネル被覆資材を工夫し、夜温20℃以上、日中温度30~35℃、日中湿度80%以上を目安に管理してください。


写真:不織布のべたがけを利用した「べにはるか」のポット苗を用いた育苗の様子