ニホンナシの省力樹形用大苗育苗技術

2024年3月

筆者所属千葉県農林総合研究センター果樹研究室
職名及び氏名研究員・籠橋駿介
題名ニホンナシの省力樹形用大苗育苗技術

1 はじめに
千葉県のナシ園では改植が必要な老木園が多くあります。改植に当たっては大苗の利用が有効とされています。千葉県農林総合研究センターでは、従来の方法よりも簡易に設置や誘引ができるフラワーネットを用いた簡易大苗育苗法を開発しましたが、この方法で優良な大苗を育成するための栽培条件は明らかになっていません。そこで、簡易大苗育苗法に適したかん水、施肥及びジベレリンペースト処理の方法を調査しました。併せて、直植えに対する大苗移植の早期成園化効果を検証しましたので紹介します。
2 かん水
4月から11月まで降雨の有無に関わらず朝昼夕の3回に分けて毎日行います。かん水量は1樹当たり日量1Lが適切です。電磁弁を用いた自動かん水が便利です。
3 施肥
1樹当たりの年間の施肥量は窒素50g、リン酸40g、加里45gとします。窒素成分の2/3は緩効性肥料(ハイコントロール13-9-11など)として4月に施用します。残り1/3は化成肥料で10月に施用します。
4 ジベレリンペースト処理による新梢伸長促進
新梢基部へのジベレリンペースト処理の効果を比較しました。4月の1回処理のみでも無処理より21cmの伸長増が認められましたが、4月、5月及び7月の3回処理を行うことで効果が高まります。
5 早期成園化効果の検証
ジョイント仕立てにおいて、1年生苗を直接圃場に定植し主枝を直立させて育成すると、定植翌年にジョイント可能な苗は全体の約4割にとどまりました。一方、大苗を用いると移植時に約8割の苗でジョイントできました。しかし、大苗は植え傷みにより初期生育に影響が生じやすいため、同樹齢では1年生苗を直植えした場合より側枝が短く樹冠の拡大が劣りました。このことから、既存樹からの収穫を続けながら徐々に改植を進めたい園では大苗移植、かん水ができない等植え傷みが心配な園では1年生苗を直植えとするなど、条件によって使い分けましょう。

【図説明】簡易式大苗育苗施設