量管理的手法を用いたヤシ殻培地耕による長期多段どりトマト栽培

2021年3月

筆者所属農林総合研究センター野菜研究室
職名及び氏名上席研究員 木村 美紀
題名量管理的手法を用いたヤシ殻培地耕による長期多段どりトマト栽培

トマトの循環式の養液栽培ではEC制御による培養液濃度管理が一般的に行われています。この方法は制御が簡単な利点がありますが、必要以上の肥料が供給されやすく、過繁茂や施肥の無駄が生じやすい欠点があります。これに対し、培養液を肥料の「濃度」ではなく「量」で管理する「量管理法」は生育ステージに合わせて必要な肥料を1日に一度与える施肥方法です。EC制御法に比べ、コンパクトな草姿となり、収量や果実品質が向上し排液中にも窒素成分が残りにくいことが知られています。

一方、近年、ヤシ殻培地耕が注目されています。ロックウールより培地が廃棄しやすいこと等により栽培面積が拡大していますが、この栽培法に適する施肥法については明らかになっていません。そこで、ヤシ殻培地耕においても量管理的手法が適用可能か7月は種のハウス促成栽培で試験を行いました。

その結果、水質が比較的悪い原水にも対応できる掛け流し式で栽植密度は2.6株/m2程度とやや密植にすること、10a当たりの1日窒素施用量を、定植以降50g、第1果房開花以降130g、第1果房着果(ピンポン玉大)以降250g、3月以降370g、主枝摘心以降120gを目安(ただし、曇雨天時の施用量はこれらの1/2)に施用することで、適正な草勢を長期に維持でき、年35t/10a程度の安定した高収量を達成することができました。

本栽培方法で必要な機材は、定量ポンプやかん水タイマー、電磁弁、ヤシ殻培地、点滴かん水用のドリッパーやチューブなどです。すでにEC制御法で行っている場合、量管理的手法に切り替えるには、定量ポンプ等をタイマー制御に切り替えるだけと、低コストで容易に自作可能ですので、ぜひお試しください。

(図)量管理的手法を用いたヤシ殻培地耕の栽培システム