生育初期のかん水によるサツマイモ「ベニアズマ」の丸いも発生軽減技術

2022年6月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 水稲・畑地園芸研究所 畑地利用研究室
職名及び氏名研究員 山下 雅大
題名生育初期のかん水によるサツマイモ「ベニアズマ」の丸いも発生軽減技術

サツマイモ「ベニアズマ」はホクホクとした食感が特徴で、青果用として量販店で販売されるほか、天ぷらや大学芋などの惣菜向けとして調理されて販売されることが多く、用途に汎用性があり需要が根強い品種です。

しかし、「ベニアズマ」の作付面積は年々減少しており、その原因の1つに“丸いも”の発生割合が高いことが挙げられます。「丸いも」とは、いもの長さが太さの2.5倍以内のもので、丸品という規格に分類されて安価で取引されています。「丸いも」が産地全体で発生した平成28年は4月から5月の畝立て前に降水量が少なかったことから、生育初期の畝内土壌の乾燥が丸いもの発生に影響している可能性があると考えられました。

そこで、土壌水分と丸いもの発生の関係を明らかにするため、植付け50日後まで雨よけをしてかん水試験を実施しました。その結果、植付け10日後にかん水チューブで約30mmかん水を行った区は、無かん水区と比較して、いもの長さが約2cm長くなり、丸いもの発生が無かん水区の24.5%から5%未満と大幅に減少しました。

このことから、苗が活着する植付け10日後頃の土壌の過乾燥がいもの伸長に影響して「丸いも」が発生しやすくなることがわかりました。生産現場では、植付け前後のマルチ内の土壌水分状態や気象条件を確認してかん水を行ってください。また、保水力のある土づくりや畝立て時の土壌水分の確保にも併せて取り組むことが「ベニアズマ」の良品生産に向けて重要となります。

(写真)かん水器具設置の様子