ニホンナシ「秋満月」の育成及び適正着果基準

2023年2月

筆者所属千葉県農林総合研究センター果樹研究室
職名及び氏名室長 押田 正義
題名ニホンナシ「秋満月」の育成及び適正着果基準

1 はじめに
千葉県で栽培されているニホンナシの品種は、早生品種の「幸水」と中生品種の「豊水」で全体の約80%を占めています。晩生品種では「新高」が最も多く約9%を占めますが、肉質が粗いことなどから減少傾向です。そこで、大果で良食味の晩生品種「秋満月(あきみつき)」を育成したので紹介します。

2 育成の経過と品種特性
「秋満月」は、「豊水」に優良系統「7-7」を交雑して育成した赤ナシです。なお、正式な品種名は「千葉K3号」で、「秋満月」は愛称です。収穫期は9月中旬~10月上中旬で、「新高」とほぼ同時期です。果重は700g以上と大果になり、糖度は13度程度で、酸味が少なく甘い品種です。肉質が柔らかく滑らかで果汁が多く、食味は極めて良好です。
開花期は「豊水」と同時期で、「新高」を除く主要品種と交配できます。短果枝の着生及び維持は良好で、「新高」と同様の短果枝主体のせん定が可能です。側枝は6年程度使用できます。
なお、園地や年次により「豊水」と同様のみつ症が発生する場合があります。みつ症は果肉が半透明になり食べると柔らかく感じる生理障害です。「豊水」では、土壌が乾燥しやすい圃場などで発生しやすいため、「秋満月」もそのような圃場での栽培は避けるようにします。

3 適正着果基準
「秋満月」における適切な着果位置や着果数について調査したところ、以下のような結果でした。番果については2~4番果を着果させるのが良く、側枝上の着果間隔は25~30cm程度が適切と考えられました。この場合の着果数は10a当たり7,700~9,200個、収量は5.4~6.4tと試算されます。

【写真】「秋満月」の着果状況