地球温暖化防止に貢献する農地の役割~土壌炭素量と有機物施用との関係~

2023年3月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 土壌環境研究室
職名及び氏名研究員 宮本 昇
題名地球温暖化防止に貢献する農地の役割~土壌炭素量と有機物施用との関係~

土壌への有機物の施用によって、有機物中の炭素が土壌中に蓄積されるため、結果的に温室効果ガスである二酸化炭素の純排出量を減らすことができます。ここでは、堆肥の長期連用圃場で明らかになった、土壌炭素量(地表から深さ30cmまでの土壌に蓄積している単位面積当たりの炭素量)に対する有機物施用の効果について紹介します。

農林総合研究センターでは、堆肥施用が炭素貯留に及ぼす効果を把握するため、堆肥を長期連用する圃場を設けて、作物を栽培しています。堆肥の施用は平成15年から開始し、春ダイコンと秋冬ダイコンの年2作を栽培しています。試験区は、堆肥を施用せずに化成肥料のみを施用する化成肥料単用区、毎年秋冬ダイコン作付け前に化成肥料単用区と同量の化成肥料と牛ふん堆肥を3t/10a施用する堆肥3t連用区、同様に化成肥料と牛ふん堆肥を6t/10a施用する堆肥6t施用区の3種類です。令和2年度の土壌炭素量は、化成肥料単用区が61t/ha、堆肥3t連用区が86t/ha、堆肥6t連用区が104t/haであり、堆肥を多く施用するほど、土壌炭素量が多くなりました(図)。

このように、堆肥の施用量が多いほど土壌炭素量は多くなり、温室効果ガス排出削減に寄与すると考えられました。なお、今回紹介した試験区の処理は試験研究を目的に小面積で行ったものです。堆肥の過剰施用は、土壌の養分過剰やpH上昇等の原因となるため、土壌診断に基づいた適正な施用を心がけましょう。今後、土壌炭素量をさらに増加させる農地管理技術を確立できれば、地球温暖化防止に大きく貢献できると考えられます。

ここで紹介したデータは、国庫「関東農政局・農地土壌炭素貯留等基礎調査事業(農地管理実態調査)委託事業」によって得られたものです。

図 堆肥連用圃場における土壌炭素量の年次変化