水田輪換畑における大豆奨励品種「里のほほえみ」の栽培法

2024年7月

筆者所属畑地利用研究室
職名及び氏名研究員 田中貴久
題名水田輪換畑における大豆奨励品種「里のほほえみ」の栽培法

 大豆「里のほほえみ」は、東北・北陸・関東の計11県を中心に広く栽培されている品種で、千葉県でも令和3年3月に奨励品種として採用されました。ここでは、千葉県の大豆生産で一般的な栽培条件となっている水田輪換畑での栽培のポイントを紹介します。
 播種時期 播種時期は、収量が高く、青立ちや倒伏の発生も少ない7月中旬が最適です(表1)。7月下旬播種では、中旬播種に比べやや収量が減少する傾向があります。また、播種時期が8月に入ると主茎節数や莢数、百粒重などが減少し、これに伴って収量が著しく減少するため、遅くとも7月下旬までの播種が望ましいです。
 基肥窒素の施用量 基肥窒素の施用量の目安は、10a当たり3kgです。10a当たり3~9kgの範囲で施肥試験を行ったところ、生育や収量・品質及び青立ちや倒伏の発生程度に差がありませんでした。
 栽植密度 7月中旬の播種では、栽植密度を18.5株/m²(株間18cm、畝間30cm)とすると、収量が高くなる傾向がみられました(表2)。ただし、栽植密度を高くしても湿害等により苗立ちが確保できないと、収量の向上に繋がらないため、特に水田輪換畑では排水対策が重要になります。一方、7月下旬の播種では、栽植密度を高くしても明確な収量増はみられず、青立ちや倒伏に影響しませんでした。
 収穫時期 「里のほほえみ」を7月中~下旬に播種すると、10月下~11月上旬頃に莢が80%以上茶褐色になり、叩くとカラカラと音がする成熟期を迎えます。収穫時期の目安は、成熟期から1週間後頃です。「里のほほえみ」は莢がはじけにくく、在圃性の良い品種ですが、成熟期から収穫までの日数が長くなると子実品質が低下するため、注意が必要です。
 これらのポイントを押さえた栽培を行い、収量及び品質の高い水田輪換畑での大豆「里のほほえみ」の生産を目指しましょう。

表1 水田輪換畑における播種期の違いが大豆「里のほほえみ」の生育・収量に及ぼす影響(令和3年)

注1)青立度、倒伏度はそれぞれ0~100の範囲で数値が大きいほど発生程度が大きいことを示す
注2)野田市の輪換畑で畝間40cm、株間18cmの無培土狭畦栽培とした。
   施肥は10a当たりのN-P-Kで6-6-6kgとし、令和3年11月8日に収穫した

表2 水田輪換畑における播種期及び栽植密度の違いが大豆「里のほほえみ」の生育・収量に及ぼす影響(令和3年)

注1)収穫株率は、播種した種子数のうち、収穫に至った株数の割合を示す
注2)異なる英文字間には5%水準で有意差あり(Tukey-Kramer法)
注3)野田市の輪換畑で無培土狭畦栽培とした。
   施肥は10a当たりのN-P-Kで6-6-6kgとし、令和3年11月8日に収穫した