緑肥の後作はリン酸を減らせる!-キャベツ・ニンジンにおけるリン酸減肥栽培-

2021年10月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 土壌環境研究室
職名及び氏名研究員 宮本 昇
題名緑肥の後作はリン酸を減らせる!-キャベツ・ニンジンにおけるリン酸減肥栽培-

全国的に農地でリン酸が蓄積しており、その有効利用が必要です。また近年、緑肥すき込みによるリン酸減肥栽培が注目されています。ここでは、緑肥をすき込むことによるリン酸の減肥栽培の事例について紹介します。

(1)ソルガム導入によるキャベツのリン酸減肥栽培
平成30年5月29日にソルガム「つちたろう(ジャンボ)」(雪印種苗)を播種し、8月21日に草丈191cmですき込みました。9月13日にキャベツ「YR春系305号」(増田採種場)を定植し、12月3日に収穫しました。
ソルガムをすき込んでリン酸肥料を20%減肥した区のキャベツの収量は、ソルガム無栽培の標準施肥区の収量と差はありませんでした(図1)。ソルガムのすき込みによって、後作キャベツのリン酸20%減肥が可能でした。

図1 ソルガムすき込み後のキャベツの収量
注)図中のバーは標準誤差を示す

(2)エンバク導入によるニンジンのリン酸減肥栽培
平成29年2月20日と3月13日の2回に分けてエンバク「ヘイオーツ」(雪印種苗)を播種し、5月25日にすき込みました。すき込んだエンバクの草丈は2月播種が78cm、3月播種が53cmでした。7月25日にニンジン「愛紅」(住化農業資材)を播種し、11月7日に収穫しました。
2月及び3月播種のエンバクをすき込んでリン酸肥料を20%減肥した区のニンジンの可販収量は、エンバク無栽培でリン酸を標準量施肥した区の可販収量と差がありませんでした(図2)。エンバクのすき込みによって、後作ニンジンのリン酸20%減肥が可能でした。

図2 エンバクすき込み後のニンジンの可販収量
注)図中のバーは標準誤差を示す

なお、ここで紹介した技術は、農林水産省委託プロジェクト「生産コストの削減に向けた有機質資材の活用技術の開発」で得られた成果の一部です。