パッションフルーツ「サマークイーン」の耐寒性

2021年9月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 暖地園芸研究所 特産果樹研究室
職名及び氏名研究員 小野瀬 優哉
題名パッションフルーツ「サマークイーン」の耐寒性

パッションフルーツは、本県では露地や無加温施設では越冬が困難と考えられることから、1年生苗木を育成し毎年植え替える栽培が行われていますが、耐寒性の詳細については不明でした。そこで、主力品種「サマークイーン」を用いて、寒害が発生する温度について検討したので報告します。

人工気象器を用いて冬季に所定の温度に4.5時間遭遇させる低温処理を行った結果(写真)、主幹表面最低温度が-2℃以下になると落葉する株の発生率が高くなり、-2.5℃以下になると主幹の一部が褐変する株の発生率が急激に高くなることがわかりました。

低温処理を行った株を5月に露地圃場に定植して栽培したところ、落葉しても主幹が健全であれば収量の低下はみられませんでした。一方、主幹の一部が褐変した株は低温処理しない株と比べて、7~8月の収量は低くなり、10月の収量は増えたものの、総収量は3割ほど少なくなりました。このことから、「サマークイーン」では主幹が褐変する程度の寒害を受けると翌シーズンの収量が低下し、その発生条件は主幹表面温度-2.5℃以下であると考えられました。

最低気温が氷点下の日における露地圃場の気温と、主幹表面温度を調査した結果、主幹表面温度が-2.5℃となった場合の露地圃場の気温は-0.2℃~-2.1℃であり、気温より主幹表面温度の方が低いことが明らかとなりました。これは晴天で風が弱い夜間に顕著にみられる放射冷却によるものと考えられました。

館山の年最低気温(アメダス)は、過去50年間において平均で-4.6℃、最も高い年でも-2.4℃であり、無被覆でパッションフルーツを越冬させるのはやはり難しいといえるでしょう。

一方、施設栽培においては、氷点下にならない程度の加温を行えば、燃料費が抑えられ比較的低コストで越冬させることができると考えられます。

写真 人工気象器での低温処理の様子