マルチ処理によるナシ幼木の生育促進

2019年11月

筆者所属千葉県農林総合研究センター 果樹研究室
職名及び氏名上席研究員 戸谷智明
題名マルチ処理によるナシ幼木の生育促進

ナシの改植では、定植した苗木の初期生育を促すことが重要です。そこで、定植した苗木の株元を農業用ポリエチレンフィルムで被覆(マルチ)する技術を開発しました。
本技術を活用することで、初期生育が促進され、新梢生育が慣行と比べ2 倍以上になり、それに伴い葉数も増加します。
また、初期の細根発生量が慣行と比べ1.8 倍になり、活着が良好になります。
樹の生育に伴い、初期収量も慣行と比べ1.9 倍になります。
処理の手順は、写真に示すように、まず被覆範囲を決め、その周りに溝を掘ります。

次に、被覆範囲全体に施肥を行います。その上から農業用ポリエチレンフィルム(透明、厚さ0.02mm)を被せます。最後に、フィルムの端を溝の中に入れて土で固定します。
被覆する範囲は、1 年生苗木を定植する場合は、1 年目が縦横0.5m、2 年目が1m、3 年目が1.5mとします。大苗(2 年育成)を定植する場合には、1 年目が縦横1.4m、2 年目が2mとします。施肥は、ロング413(溶出期間270 日、ジェイカムアグリ(株)製)を用いて、年間窒素成分量の70%をマルチの下に施用します。

施肥量は、1 年目は500g、2 年目は1 ㎏、3 年目は1.5 ㎏です。大苗の場合は、1 年目は1.2 ㎏、2 年目は2.4 ㎏です。年間の窒素成分量の30%は、被覆前の3 月と除去後の12 月に、株元に化成肥料などで施用します。
被覆は4 月下旬に行い、11 月に撤去します。
注意点として、マルチ処理の効果は、黒ボク土において確認していますが、その他の土壌で処理した場合の効果は現在調査中です。
また、本技術は苗木を定植した1 年目から実施することが前提で、定植2、3 年目まで継続して行うと効果的です。