ナシ改植時のいや地リスクを簡単測定

2020年10月

筆者所属農林総合研究センター 果樹研究室
職名及び氏名上席研究員 戸谷 智明
題名ナシ改植時のいや地リスクを簡単測定

ナシ栽培圃場では、改植した苗木にいや地現象とよばれる生育不良が発生し、改植推進の阻害要因となっています。そこで、アスパラガスのいや地検定に用いられている根圏土壌アッセイ法を活用し、ナシのいや地現象の強弱(いや地リスク)を数値として目に見える形としました。

本法は、調査する土壌と寒天を混ぜ合わせ作製した培地の上に、レタス(いや地現象の発現に敏感に反応)を播種し、伸長した根の長さを測定します。寒天のみの培地での根長に対する割合(土壌の阻害率)により、いや地リスクを診断する方法です。この方法をナシで活用するためには、測定結果とナシの樹体生育が一致する必要があります。
そこで、土壌の阻害率が59%、41%、29%、22%及び14%の5段階になるようにナシ連作土と新土を混ぜ合わせて作製し、それぞれに「あきづき」1年生苗木を定植しました。樹の生育を調査したところ、土壌の阻害率が高いほど、新しょう等の生育は不良となる傾向が見られました。新しょうの乾物重を指標に、改植時のいや地リスクを評価しました(図)。
定植時の土壌の阻害率が60%程度では、樹の生育量が新土の半分程度と大きく劣るため、客土などの抜本的ないや地対策が必要です。また、40%程度では、樹の生育量が新土の7割程度と劣るため、活性炭などの対策が必要です。一方で、30%程度では、樹の生育は新土の9割程度と大きく変わらないことから、これ以下の数値ではいや地対策は不要と判断できます。

このように、本法を活用すれば、改植時のいや地リスクを評価でき、その結果に基づいて過不足のない対策が取れるようになりました。本法は1検体当たり50円と低コストで、特別な機材や技術が不要な診断法であることから、普及指導機関などでも容易に使用できます。

図 土壌の阻害率とナシの新しょう生育